美を極めるものが知る“分子シャペロン”~ヒートショックプロテイン(HSP)スキンケア応用講座~

美を極めるものが知る“分子シャペロン”~ヒートショックプロテイン(HSP)スキンケア応用講座~

人体と細胞

ヒートショックプロテイン(HSP)が美容について有効であることをご存知の方は、アンチエイジングにおける最先端の知識を持っていると言っていいでしょう。
そもそもタンパク質というものが、いかに人間の身体の形成、また老化システムなどに影響を及ぼしているかを知ることが、美と健康に関しての意識の持ち方に大きな差をもたらします。

私たちの身体の中には60兆もの細胞があり、その細胞を構成するのがタンパク質です。タンパク質がフルに働くためには、なにか変化が起きた時にそれを修復するなど、正しい構造を維持するためのメンテンナンスが極めて重要です。その役割を担うのがヒートショックプロテイン(HSP)と呼ばれるストレスタンパク質、および分子シャペロンと呼ばれるタンパク質なのです。

美と健康のメカニズムを、“分子シャペロン”“ヒートショックプロテイン(HSP)”をテーマに探っていこう、というのが本稿のテーマです。一般に「身体を元気にさせる」「綺麗な肌をつくる」という表現が出回っていると思いますが、ではそれは具体的にどういうことなのか、ということを解明していきます。皆様の実生活においての、美肌育成や健康維持に大きく関与してきますので、ぜひお役立てください!

交告承己

美容アドバイザー

この記事は美容管理アドバイザー交告 承己(こうけつ うい)が執筆しました

日々、お肌について悩むお客様からのご相談をお受けしているお肌美容の専門家です。おひとりおひとりに対して懇切丁寧に、アドバイスをさせていただいております。スポーツ記者だった経歴を活かし、運動や健康管理の側面からも、美容に関して鋭く迫ります!

1.タンパク質を知る者は 美と健康を制す

健康的で肌の美しい女性

人間の身体の60%以上は水分が占めておりますが、その次に多くを占める重要な構成要素が各種タンパク質です。タンパク質が正常に働くことで、私たちは健康に身体が作動し、お肌などの状態も艶やハリを持ったいい状態でいられるのです。

しかしタンパク質が常に正常であることはなかなか難しいのです。その大きな要因が“老化”です。
美容にとっても健康にとっても、人はいかに老化と向き合っていくかがとても大切です。そのメカニズムを知ることで、年齢を重ねても元気に美しく輝くことが可能になるのです。そこで登場するキーワードが分子シャペロンというわけです。
アンチエイジングの根本となるものです。

第1章では、タンパク質が乱れると人間にどういう症状が起きてしまうのか、またタンパク質の構造を分析し、タンパク質が乱れるというのは一体どのようなことなのか、を具体的に探っていきます。そしてその中で、分子シャペロンがとても重要な役割を担うことを見ていきます。
日頃のスキンケア・美肌育成・健康維持に、繋がってくる根本的な知識となりますので、早速みていきましょう!

1-1 タンパク質の乱れで起きてしまう、世にも恐ろしいこと

老齢の女性

人間の身体がなにか異変を起こし体調不良となったり、様々な病気や傷害を発してしまうのは、何らかの原因によってタンパク質が傷ついてしまうためです。
傷つくということを正確に表現しますと、タンパク質を形作っている構造が歪んで崩れてしまったりしてしまうことで、正常な働きができなくなるということです。これに対応するべく、傷ついたタンパク質を修復することで細胞を守っていくことが、極めて重要になってくるというわけなのです。

現代社会では肉体的のみならず精神的なストレスも日常的に抱えることがありますが、こうした様々なストレスによってタンパク質が傷害され、異常なタンパク質が細胞内に溜まってきてしまうと、侵された細胞は正常ではない、いわゆる病的な状態となります。加えて、老化により肉体機能が衰えるとストレスへの抵抗力も更に弱まってしまい、高齢者の熱中症やウイルス感染の割合はどうしても高くなってきてしまいます。

タンパク質が正常に構成されていない状態を“凝集体”といいます。これについての詳細は後述いたします。高齢者の認知症やパーキンソン病は、タンパク質の凝集体が原因となり、異常タンパク質が蓄積されることによって生じることがわかっています。細胞の老化により、異常タンパク質の修復・分解能力が低下することがその引き金となっていると考えられています。

「美しく年を重ねたい」という人間の永遠の欲求に対しても、暗い影を投げかけるのが、タンパク質が受けるダメージです。加齢による年齢肌の悩み、紫外線などがもたらす肌荒れ、日常のストレスから結びつく肌悩みなども、お肌を構成するタンパク質がダメージを受けているから引き起こされてしまうものなのです。

大事なことはストレス傷害により構造異常を起こしたタンパク質を修復し、タンパク質を正しい構造に戻してあげることに意識を向けることです。そこで脚光を浴びるのが“分子シャペロン”、というわけです。

タンパク質の構造が乱れ、正常でなくなることの恐ろしさをご理解いただけたでしょうか。では、タンパク質の構造って、そもそも一体どのようなことなのかを具体的に見ていきましょう!

2.タンパク質のできる仕組みを知ろう!

活動的な女性

生命活動の担い手で、美と健康の中枢であるタンパク質は、アミノ酸が連なったひも状の状態がもともとの原型です。このひも状のことをポリペプチドと呼びますが、ひものようにブラブラしている状態とお考えいただければよいと思います。

タンパク質は、このひも状のブラブラな状態では働くことが実はできません。アミノ酸の並び方にある特有のかたちに、しかるべき立体構造に折りたたまれる必要があります。そのしかるべき折れたたみのことを「フォールディング」といい、こうしてはじめてタンパク質の構造ができあがります。

しかし生まれてきたばかりのタンパク質は非常に不安定なため、安定しようと、周りに同様の不安定な状態にあるひも状に安易に結合しようとします。また、たとえうまくフォールディングした後でも、例えば熱が加わってしまうと運動エネルギーが発生してタンパク質の結合が崩れ、崩れたタンパク質同士が結合してしまうこともあります。これらのことで、タンパク質の“凝集体“ができてしまいます。先ほど出てきた凝集体の実体が、こちらというわけです。

細胞の中でタンパク質が凝集してしまうと、細胞は死んでしまいます。それでは困りますよね? しかしながらなんだかんだ言って、タンパク質は凝集せず、私たちの身体の中で働いています。それは結合しようとするタンパク質に寄り添い、他と結合しないようにしてくれる存在がいるからです。

いよいよ“分子シャペロン”、“ヒートショックプロテイン(HSP)”の登場です!

2.分子シャペロンがタンパク質を救う 老いからあなたを守る救世主

細胞を守るイメージ図

タンパク質が普段正しく働いてくれる背景には、それを可能にしてくれる“分子シャペロン”という存在があります。いったい分子シャペロンとはなんなのか、そしてヒートショックプロテインとの関係性はどのようなものなのか。そのことに迫っていきます。ワンランク上のアンチエイジングを目指すためにも、是非とも知識として身に着けておきましょう!

2-1 分子シャペロン様様!人が美と健康を目指せる秘密

外敵から人体を守る細胞

シャペロンという単語は、chaperoneと綴るフランス語が語源です。

原義は、「デビューしたての若きレディーが(周辺の輩たちとの不適切な関係などを防ぎながら)一人前になるのを介添えする年配の婦人」

引用元:一般社団法人 日本生物物理学会

という意味とされています。

1章で解説した通り、タンパク質はしかるべき折れたたまれ方でフォールディングされなければ、働くことができません。分子シャペロンは、細胞内でタンパク質が正しくフォールディングされるのを助けているのです。つまり、あたかも社交界デビューのレディーを介添えする貴婦人のように、タンパク質が産まれてから死に至るまでの「タンパク質の一生」の様々な過程における介添えタンパク質全般を指す用語して、分子シャペロンという言葉が定着しました。

わたし達の身体は60兆個に及ぶ細胞で作られていますが、水分を除けば身体の大部分は各種タンパク質で作られています。筋肉も髪の毛も、爪も、そしてお肌も、タンパク質できています。常に新しいタンパク質が各組織の細胞でつくられ、古くなったタンパク質は分解処理をされます。
こうした一連のサイクルでタンパク質を正しいフォールディングに導き、身体各所に運搬し、その後の分解に至るまで、分子シャペロンがタンパク質の付き人となるのです。そして、様々な病気や傷害をひきおこす原因になるようなストレスが細胞に加わった時、そうした傷害からタンパク質を守るために増加し、防御・修復をしてくれるのです!

2-2 ヒートショックプロテイン(HSP)の正体HSPスキンケアとは

髪の美しい女性

ヒートショックプロテイン(HSP)は、分子シャペロンの1種と言っていいですが、簡単に違いを述べると以下のごとくとなります。

新しく生まれたタンパク質のフォールディングを助ける役割をもったタンパク質が“分子シャペロン”、一度作られたタンパク質がストレスなどによってミスフォールド(タンパク質の構造が崩れる)したものを正しくフォールドし直すものを“ヒートショックプロテイン(HSP)”と分類されます。

つまり一度かたちとなったタンパク質が、何らかの原因でストレスが加わることでかたちが崩れてしまったときに活躍するのがヒートショックプロテイン(HSP)ということです。スキンケアで例えると、お肌の細胞内のタンパク質が、紫外線などのストレスダメージを受けることでかたちが崩れ、シミやシワといった肌荒れ症状が生じるときに、肌内部にヒートショックプロテイン(HSP)があることで、そういったダメージや症状を修復してくれるんですね♪

HSPスキンケアとは、上記の点に着目し、ヒートショックプロテイン(HSP)をスキンケアの度に補填していくものです。タンパク質に働きかけるというのが、その正体だったわけです!

3.3 まとめ

記事の終わり

ヒートショックプロテイン(HSP)は、身体の中に存在するリペア機能です。しかし、どうしても加齢、ストレス、疲労で減少してしまうものなので、それを維持することがとても重要なテーマになります。

それは美容面にとどまらず、健康面においても同じです。それは身体の大きな割合を占めるタンパク質であるからです。

このタンパク質の構造を正しく保つことが、健康で美しくいられる秘訣でした。そのためには分子シャペロン効果を壊さないようにするため、ヒートショックプロテイン(HSP)をできるだけ減らさないように心掛けることです。

そのことを意識して、健康・美容維持、アンチエイジングを行っていくと、中長期的な効果が全く変わってきます。本当の効果は、身体の芯から得られるものなのです。

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